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佐々木昭一郎作品『夢の島少女』の衝撃 池田博明 （1998年8月27日記） 『夢の島少女』は，1974年10月15日（火）NHK総合テレビで夜10時15分から75分間，芸術祭参加テレビドラマとして放送された。なんの先入観もなく， 下宿の室の白黒テレビ（カラー作品であるが）で見始めた僕は，すぐに画面から目が離せなくなった。 そして，ドラマが終わってしばらくは， 心の底からわきあがる感動に言葉を発することが出来なかった。 当時，愛知県豊橋市からキネマ旬報にすぐれた映画評論を寄稿しており， 文通のあった藤田真男君に手紙を出したところ，彼も同様の手紙を僕に出したところだった。 二人で傑作･傑作と盛り上がった勢いで， 藤田君が『日曜日にはTVを消せ/夢の島少女特集』 という18ページのミニコミを作成した（1974年11月17日付）。 このミニコミは映画仲間に郵送で配布するものであった。いまなら，インターネットのホームページや掲示板を利用するところだろう。 藤田君は1974年12月15日付で『夢の島少女』特集第２号 も発行した。 ところが，『夢の島少女』は芸術祭でなにも受賞することがなかった ｡当時は一般家庭にビデオ装置などはなく，見逃した作品は永久に見られないのだった。 それからは信じられないようなことが起こった。 作ったミニコミをキネマ旬報の読者の映画評で知り合った札幌NHKの原田隆司さんに渡したところ， 演出者の佐々木昭一郎さんの手に渡り，感激した佐々木さんと僕らは連絡をとり合うようになったのだ・ 『日曜日にはTVを消せ』も，週刊誌やTV時評に取り上げられたりした。 もっとも購読希望が殺到したという話はきかなかったが。僕らが傑作と激賞したにもかかわらず， 玄人すじの評価は惨澹たるものだったようだ。｢素人が右往左往するだけのドラマ｣と酷評した人もあったらしい。 僕らには信じられないことだった。 僕は1975年の3月から神奈川県の小田原市で高等学校の教員を始めた。 藤田君はしばらくして大学を中退し，上京して，本格的に映画評論を始めるようになった。 佐々木さんは東京のNHKで『夢の島少女』の上映会を開催して下さったし， 佐々木さんの御自宅にお邪魔して『夢の島少女』のヒロイン･中尾幸世さんにお会いしたこともある。 佐々木さんはその後，劇画シリーズとして『紅い花』を作り， ついに『四季・ユートピアノ』を作って，再び高く評価されるのだが， その間の創作者としての苦闘はたいへんなものだったと思う。 『日曜日にはTVを消せ』は僕と藤田君と交替で作成して， その後10号まで出したが，『夢の島少女』が無ければ，これらが作られることはなかったろう。 これらのミニコミに藤田君が書いたことは，今でも古びない，パワフルな内容である。 → 『日曜日にはTVを消せ』目録および佐々木昭一郎関連資料 現在（1998年），マスコミに流布するたれ流しの映画評やTV評とはまったく違っている。 このホームページでも時間さえあれば，『日曜日にはTVを消せ』を再録していきたいと思うが， 仕事が忙しくて，ホームページにアップできるのは，早くてもあと10年くらいは後になってしまいそうだ。 二度と見られないと思っていた無冠の『夢の島少女』は1997年のNHK衛星放送｢佐々木昭一郎の世界｣で放送され， 多くの人々に見てもらうことが出来た。 僕自身もビデオに収録することができて，永遠の宝物となった。 2001年5月13日（日）ＮＨＫアーカイブスで再放送されました！ |
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